第43回  イメージングカフェ サマーSP  レポート

2015年7月29日(水) 15:00より東京工業大学・大岡山蔵前会館にて、第43回イメージングカフェ・サマースペシャルを開催致しました。(参加者31名:委員、講師含む)

今回は「デジタルプリンティングと日本伝統技能の融合による文化継承事業 〜開創1200年 総本山金剛峯寺(高野山)所蔵 両界大曼荼羅 想定色平成再生版プロジェクト〜」と題して、凸版印刷株式会社の前田伸幸様と株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズの小島勉様にお話しいただきました。今年は、高野山の開創1200年にあたり高野山にちなんだ多くの行事が催されていますが、高野山の文化継承に最先端のイメージング技術でかかわってきたお二人の長年の取り組みについてお聴きできる貴重な機会となりました。

凸版印刷ではデジタルアーカイブ技術をいち早く手掛けてきました。高野山とは2015年の開創1200年に向けた大曼荼羅プロジェクトチームを2002年に発足し、前田様はその間ずっとプロジェクトのリーダーとして推進してこられました。開始当初には高野山側との進め方の相違で二年ほどの停滞もあり、宗教組織、伝統文化、といった異なる価値観を持つ集団とのプロジェクト推進にひとかたならぬ苦労をされたそうです。

本プロジェクトは大きく4つのステップに沿って進められてきました。
  (1)保護・保存・継承のためのデジタルアーカイブ
  (2)アーカイブデータから曼荼羅の等寸大(4m四方)の複製版の製作
  (3)曼荼羅の製作当時(850年前)の色を再現した復元版の製作
  (4)曼荼羅諸仏尊のデータベース化
2008年6月15日には複製版(Step2)が完成し奉納され、さらについ先日の2015年7月3日には復元再生版(Step3)が完成し高野山に奉納されました。

注)「複製」とは対象物の現時点の状態と同じものを作ること、「復元」とは対象物が経時劣化や損壊する以前の状態を再現することをいう。

複製版を製作するにあたり、当初はオフセット印刷で製作しようと考えていましたが、色再現の安定性などの課題から大判インクジェットを使用したプリマグラフィに切り替えたとのことです。印刷媒体はインクジェット用和紙で約4m四方のサイズを3x5に分割プリントし、表具師が匠の技で完璧に仕上げる、というデジタルと職人技が高度に融合した作品となりました。

復元版の製作に当たっては、摩耗や変色で見えなくなってしまったものを解析するために赤外線撮影や軟X線撮影などの科学的調査に加え、他の寺に保存されている古い曼荼羅図を含めた仏教資料の調査も行いながら、描かれている1885尊にも上る仏尊の一つひとつの画像情報を高野山の学芸員たちが綿密に確認しながら、データベースとし大曼荼羅を復元していきました。当時使用されていた顔料成分の分析や仏画技法に即した色調の推定など、多くの試行錯誤があったそうです。
復元データを完成した後、復元版の製作に取り掛かりました。等寸大(4m四方)と1/2縮小版(2m四方)、当初はどちらも仏画師による手描きを計画したそうですが、等寸大では仏画師の手描きでは作業しきれないとのことで100%プリマグラフィで描きました。一方、縮小版では50%ほどをプリマグラフィでプリントし、残りを仏画師が仕上げる、という手法がとられました。

10年以上にわたる大プロジェクトのプロジェクト推進に関わるご苦労とともに、その間のインクジェット技術の目覚ましい進化を実感するご講演でした。

記・企画委員 石井昭(富士ゼロックス)


次回(第44回)は、9月4日(金)に開催予定です。詳しくは開催案内をご覧ください。