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第61回 イメージングカフェ レポート |
2017年6月30日(金)、日本印刷会館にて第61回イメージングカフェを開催しました。講師には、東京大学名誉教授の尾鍋 史彦様をお迎えし、「人間科学から紙メディアの本質に迫る 〜 未来を拓くポテンシャルとは何か 〜」のタイトルでお話いただきました。参加者は39名(講師・委員含む)でした。紙の本質に関わる議論や、紙を人間が作り使うモノとして捉えた「人間とモノとの関係」という、技術以外の人間諸科学(発達心理学、認知科学、認知心理学、感性科学など)の視点から紙メディアについてご説明いただきました。
紙とは、人間が情報の表示・操作・保存を目的として作った認知的人工物であり、
人間との高い親和性(人間の感覚・知覚・認知などとのなじみやすさ)を兼ね備えている 感情価が非常に高い(人間が「快」と高く感じる)という点で、認知科学的に優位性を持っているとのことでした。
また、西欧社会では、紙は広く記号としての文字を支える材料、とする考え方があり、紙は、「人間の意識に強く働きかけると革命さえ起こし、人間社会を変革させるほどの強さを持っている」、とメディオロジー(フランスの構造主義哲学の中から生み出されたメディアの思想)で表現されており、「共産党宣言」「毛主席語録」などの事例を挙げてご説明いただきました。
さらに、発達心理学より、人間の性格は生得性(生まれつき)と習得性(学習・経験で獲得)から成り立っており、メディアに対する親和性は、成長過程に起因するこの習得性に大きく影響されるようです。電子メディアは生得性の部分が低いが、紙は生得性の部分が強いために人間との親和性が高いとのことでした。最後に、電子書籍や電子ペーパーなどの電子メディアの可能性、および教育へのIT導入に関して、デジタルファティーグ(デジタル疲労)という生理的・心理的違和感の発生、疲労感による記憶の阻害、などの問題点を解決しなければ、メディアの中で最高の感情価をもち、かつ人間との親和性が高いという紙のレベルには近づけないであろうとのお話でした。
紙メディアを手放すとどうなるか?という問いに対して、「人類の衰退化に繋がる」と述べられ、如何に紙が人間と深く関わり合っているか、人間諸科学を通して紙の本質を知ることができました。紙もしくは紙の印刷に携わる者にとって、非常に励みとなるご講演でした。
記・企画委員 名越 応昇(三菱製紙)
次回(第62回)は8月4日(金)に開催予定です。詳しくは開催案内をご覧ください。