第63回  イメージングカフェ  レポート


2017年9月13日(水) 18時30分より、東京工業大学(大岡山) 蔵前会館 3F 手島精一記念会議室にて第63回イメージングカフェを開催しました。講師には、資生堂の高野ルリ子様をお迎えし、「メイクアップを心理学で科学する 〜 経験則・理論どちらが先か? 〜 」のタイトルでお話いただきました。参加者は36名(講師・委員含む)でした。

講師の高野さんは、ストレスの研究から、気持ちを測る手段として顔研究に興味を持ち、顔の形態と印象との関連や美しく好ましい顔に関して、メイクアップの背景理論の構築に取り組まれています。また、子供たちに顔の魅力を向上させる楽しみを知ってもらう笑顔講座を開催されているそうです。

初めに、モデルを使って実現した明治から現代までのメイクを、10年単位で辿りました。海外映画の影響を受けた1950年代の太眉女優顔、1970年代のヒッピー風デカダン顔や日本人顔への回帰、1980年代の女性の社会進出に伴う太眉のキャリアウーマン、バブル景気全盛を迎えた1980年代後半のお嬢様風スタイル、その後の、等身大・ナチュラル志向、スーパーモデル、かわいい志向、癒し顔など、時代を反映したキーワードとともに、顔の表現がこんなにも変化することで、メイクの力を驚きをもって理解しました。そして、時代でこんなにも違う顔の表現が、同じモデルで再現されていることが明かされ、参加者は更に驚きました。

化粧の起源は人類の発生とともに始まったと考えられ、身体のカモフラージュ,皮膚を守る,呪術・信仰,目立つことで威嚇など、その目的は多様です。化粧は彩色による変化を生みますが、一次作用として着色の直接効果による、顔の要素に対する色彩補強や色彩のイメージ効果と、二次作用として着色による陰影などの形態操作とが組み合わさり効果を発揮します。その最も高度なテクニックでは、周りの色の影響で色が変わって見える効果、色の使い方で大きく見えたり小さく見えたりする効果、上方からの光によるものと認識される陰影操作による立体知覚の効果など、色による錯視効果が巧みに使われています。コントラストが変わるだけで女性に見えたり男性に見えたりする例や、大きな顔の写真と小さな顔の写真で表情が異なって知覚される例などが紹介されました。

これらのテクニックを科学的に分析するために、高野さんは「顔立ちマップ」を開発され、マップを利用し顔の特徴を見分け、メイクアップのイメージ演出のガイドラインを示すことで、化粧を通して個人の魅力に気づきそれを活かしてもらうことに取り組まれています。
顔立ちマップでは、平均顔を基準として、縦軸は色彩理論に基づくパーツの配置や顔の長さの指標をとり、上は子供タイプ、下は大人タイプになります。また、横軸は造形理論に基づくパーツの形状の指標をとり、左は直線タイプ,右は曲線タイプになります。これらの2次元座標上で、パーツの配置とパーツの形状の組み合わせで顔の印象がどのように見られるかを分析し、特徴がどういう印象と結びついているかを明らかにします。
これまでは経験則から理論が導かれてきましたが、これからは錯視理論を使うことで理論から新しいメイクを生み出せる可能性が期待されます。

女性の参加者が多い企画でしたが、質問は男性参加者から多く、女性と男性のそれぞれの観点で非常に興味深い充実した講演会となりました。

記・企画委員 酒井真理(東京大学)


次回(第64回)は10月27日(金)に開催予定です。詳しくは開催案内をご覧ください。