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第70回 イメージングカフェ サマ−SP レポート |
2018年8月3日(金) 15:00より、東京工業大学 キャンパスイノベーションセンター(田町)にて 第70回イメージングカフェを開催しました。講師と企画委員を含め、36名の参加者でした。
今回は恒例の夏のスペシャル企画として、「生き残った技術・廃れた技術 (インクジェット編) 〜挑戦の歴史から学ぶ技術の将来 〜」というテーマで4つのセッション(ヘッド技術編、インク技術編、メディア技術編、システム・応用編)を設け、インクジェット技術部会の4人の専門家にそれぞれ語っていただきました。また18:00からの第2部では、各講師とお酒も交えて懇親を深めながら、引き続きイメージング技術の討論を行いました。1.ヘッド技術編 (中島一浩氏:キヤノン)
インクジェットヘッドの基本技術および利点と欠点について説明をしていただきました。インクと印刷媒体が画質に強く影響を及ぼす点や、インクの粘度と乾燥防止が非常に重要なポイントとなることなどを語っていただきました。続いて1985年以降の各社ヘッドの技術変遷について、各社製品とインクを組み合わせて解説していただきました。現在普及している普通紙印刷や顔料インクの技術を確立するために、大変な苦労があったとのお話がありました。
今回は4つのヘッド(Gould type inkjet、Beam Jet、Crystal Jet、Aprion MAGIC head)をとりあげて、技術的特徴と廃れた理由を解説いただきました。最後に、過去から現在に至るヘッドの要素技術(構成材料、加工、接合、吐出、撥水など)の変遷についての解説があり、課題点と将来への期待のお話がありました。2.インク技術編 (岡田真一氏:DIC)
始めにインクの進化の歴史の解説がありました。1980年代からのインク技術の変遷を3つの観点(高画質化(普通紙画質、写真画質と保存性)、カール制御、多用途展開)で語っていただきました。普通紙対応については、インクの表面張力、界面活性剤、高速印刷適応、カール防止などの技術をお話いただき、さらにこれからのインクに求められる機能・課題をお話いただきました。次に、色材から見たインクの歴史の解説がありました。水性染料から水性顔料、そして水性Latexのインクについて、実用化に至るまでの苦労を語っていただきました。また、今後のインク設計には、幅広いメディア対応性と高速化の対応が求められるため、下地処理剤レス及びオーバーコートレスや、乾燥の負荷低減という技術課題の克服が必要というお話もありました。最後に色材の固定化のお話がありました。固定化は、にじみと打滴干渉の抑制に必須とのことでしたが、溶解性や粘度のコントロールに技術的課題もあるため、これからの開発に期待したいとのお話がありました。
3.メディア技術編 (名越応昇氏:三菱製紙)
インクジェット用紙の技術変遷についてお話いただきました。普通紙からはじまり、マットコート紙、紙ベース光沢紙、写真用紙(膨潤型、マイクロポーラス)といった歴史的な流れと、画質から保存性への技術要求の変化について解説していただきました。1970年代後半のインクジェットヘッド黎明期から、各ハードメーカーのプリンターとメディアの技術は相乗的に進化してきた歴史があったとのことでした。メディア技術のポイントとして、1980年代の用紙着弾後のインクドット径の拡大制御、1990年代のカラー化や高画質化に対応したマットコート紙・光沢紙による吸収性と発色性の機能開発、近年の写真用紙の開発などを詳細に解説していただきました。また最近の話題として、プロジェクター用スクリーンフィルム、ペーパークラフト、写真プリントの枠を超えて創造力をかきたてる用紙(和紙やコットンペーパーなど)などの紹介をしていただきました。
4.システム・応用編 (酒井真理氏:山形大学)
今回はインクジェットプリンタの黎明期を支えたEPSON、CANON、HP各社の製品システムについて解説していただきました。各社が初期に開発したシステムの代表的スペックや価格の比較を行い、ヘッドのインク供給方式の違いを説明していただきました。ヘッドとインクカートリッジの関係変遷についても分かりやすく説明していただきました。インクジェットプリンタのシステムで重要な点として、インク供給方式とカートリッジ機能の2つをあげられ、講義の中では特にインクカートリッジの構造について詳細に解説をしていただきました。各社の代表的なインクカートリッジの分解図を交え、4つの技術ポイント(ウレタンフォーム利用、負圧弁、インク吸引を行なわないシステム、ディスペンサ型)について、設計思想と課題点を説明していただきました。
インク技術編の講義の中で、銀塩写真は今もなお高画質と保存性で優れた媒体である一方で、若い世代に銀塩写真を見たことのない人が増えているというお話がありました。慣れ親しんだ技術が廃れゆくことに寂しさを覚えるとともに、技術の移り変わりを再認識しました。
記・企画委員 近藤芳昭(コニカミノルタ)
次回(第71回)は9月14日(金)に開催予定です。詳しくは開催案内をご覧ください。