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第71回 イメージングカフェ レポート |
2018年9月14日(金)、東京工業大学キャンパス・イノベーションセンター(田町)にて第71回イメージングカフェを開催しました。講師には、生理学研究所 感覚認知情報研究部門 助教の郷田直一先生をお迎えし、『脳が作り出す「ものの質感」のイメージング』のタイトルでお話しいただきました。参加者は33名(講師・委員含む)でした。質感とは、広辞苑によると「材料の性質の違いから受ける感じ」「その材料が本来もっている感じ」と定義され、基準が存在する形や色などと違って、人により捉え方が異なる難しい特性です。先生は人がものを感じるときの脳の動きを視覚化することで、質感認識のメカニズム解明を進められており、今回はその取り組みの一環についてご紹介いただきました。
講義の冒頭に、錯覚を起こす画像や動画を実際に見せていただくことで、人の脳は自然と様々な情報を視覚上に補完してしまうことが体験として理解できました。続いて脳の構造の説明では、人やサルの脳がどのように視覚からの情報を処理しているかが紹介されました。脳の活動のイメージングにはfMRIという装置を用い、神経活動に伴う血流変化を計測し画像化することができます。今ではその情報を元に視覚像を再構成したり、夢を推定したりする試みもなされているそうです。
一方、質感の定量にはSD法を用い、金属、石、皮などの各素材に対して光沢有/無、柔らかい/硬い、人工的/ナチュラルといった視覚的、触覚的、概念的な12種類の特徴をそれぞれ5段階で数値化することで、素材の特徴を表現していきます。この方法から各素材での類似性を導き出し、脳の活動との対応を取ることで、脳内のどの部位で質感を感じ取っているかが明確になります。この実験から、人もサルも「腹側高次視覚野」と呼ばれる領域で質感を感じ取っていることがわかりました。さらに面白いことに、サルに素材を触らせ学習させると、より人間に近い脳の部位で質感を感じ取る結果が得られ、視触覚経験が質感認識の仕組みに大きな影響を与えることも明らかになりました。後半は、こうした質感に対する脳の働きをCNNで再現する試みの紹介でした。CNNは脳(視覚系)の階層性を模擬した多層ニューラルネットで、先生はこれを質感認識に適用できないか検討を進められています。先のお話と同様に、各素材の質感を定量した際の類似性と、CNN各階層での出力パターンとの相関を見ることで、質感を認識する部位に相当するCNNの階層を知ることができます。この結果から、CNNの中〜高次層が素材質感の手掛かりとなる特徴を含んでおり、質感を予測するモデルとして有用と考えられることがわかってきました。ただ、元々CNNは物体認識のために作られたものであるため、質感をパーフェクトには表せないのではないかという懸念もあり、今はひとまずやってみた結果から、ある程度質感のメカニズムがわかってきた段階であるとの事でした。
講義終了後は予定時間を超えるほど活発な質疑が行われ、特に脳内での情報の伝わり方に関する質問が多く発せられました。画像を取り扱っている我々も、脳の働きを深く知ることでもっと多くの知見が得られるのではないか、と考えたくなる、大変意義深いご講演だったと感じます。
記・企画委員 中井 洋志(リコー)
次回(第72回)は10月26日(金)に開催予定です。詳しくは開催案内をご覧ください。