第72回 イメージングカフェ  レポート


2018年10月26日(金)、東京工業大学キャンパス・イノベーションセンター(田町)にて第72回イメージングカフェを開催しました。講師には、大阪大学高等共創研究院(理学研究科)教授の高島 義徳先生をお迎えし、「可逆的結合からなる自己修復材料の今後の展開」のタイトルでお話いただきました。参加者は24名(講師・委員含む)でした。

一般の高分子材料は、強度が高ければ伸びは小さく(伸びが大きければ強度は低い)、経時により強度は劣化し、一度切れると元に戻らないものとなっています。これは、一般的な樹脂材料が切れると戻らない非可逆的な結合によって架橋されており、材料内部の分子運動が制限されていることが要因です。そこで、分子と分子の可逆的な結合で高分子を橋架けさせることで、よく伸び縮みし、強じんで切れにくく、切れても元通りにつながる、という魔法のような材料を先生は開発されています。

まず、バウムクーヘンのような台形型をしたシクロデキストリン(CD)という多糖類の分子がホスト分子となって、種々の(疎水性)ゲスト分子を取り込み、包接錯体を形成させるという、分子認識を通した材料間の接着について説明がありました。また、フェロセン(Fc)が修飾されたガラス基板と、β-CDが修飾したゲルが選択的に接着することで、分子認識・結合形成に基づく分子接着技術により無機材料と有機材料の異種材料間接着を実現できたとのことです。

次に、ホスト−ゲスト相互作用を用いた自己修復材料の設計についてお話がありました。
1つ目は、高分子の側鎖にホスト分子(β-CD)を修飾したホストポリマーと側鎖にゲスト分子(Fc)を修飾したゲストポリマーを混合する方法です。各ポリマーの水溶液を均一に混ぜ合わせると、混合溶液は固まり、流動性のない安定なヒドロゲルが形成されます。そのヒドロゲルを切断し、切断面同士にて再び接合したところ、切断した際の傷が消失し、再接着が確認されたとのことです(回復率は84%)。また、そのヒドロゲルの切断面に酸化剤を塗布すると再接着は起きないが、続けて還元剤を塗布すると再接着が認められるという、Fcによる酸化還元応答の自己修復性が得られたとのことでした。

2つ目は、ホスト分子修飾モノマーとゲスト分子修飾モノマーの包接錯体を架橋ユニットとして導入し重合させる方法です。β-CD修飾モノマーとアダマンタン(Ad)修飾モノマーの包接錯体形成後に、主鎖モノマーと共に水中で重合することによりβCD-Adヒドロゲルが形成されます。そのヒドロゲルを切断し、再結合させると、数秒後には自重を支えるほどの接着となるようです(回復率99%)。更に、コーティング材としての応用例を挙げられました。重合前の前記モノマーと光重合開始剤を混合した溶液をガラス基板上に塗布し、UV光を照射することで基板上にフィルム状のゲルが形成され、乾燥してフィルムが得られます。このフィルムにカッター刃で傷を付けた後、少量の水を噴霧すると、10分程度で表面の傷が消失するとのことでした。

続いて、水系から疎水系へと設計を転換し、無溶媒における包接錯体架橋性材料の設計について説明がありました。開発された包接錯体架橋性材料は、高い靭性を示し、また切断部分は80℃の4時間接触によりほぼ完全に修復するとのことでした。
最後に、分子の動きによる物理的自己修復と可逆的結合による化学的自己修復の融合として、ポリロタキサンをベースとした可逆的架橋物を開発し、開発品の自己修復性について話がありました。

現在、ニーズの探索をされているようです。アンチエイジング剤のような工業用、止血用機能性包帯のような医療用、歯科矯正用接着剤のような歯科治療用など幅広く応用できる可能性を秘めている、まさに魔法の材料であることが認識できた大変貴重なご講演でした。

大阪大学理学研究科とユシロ化学工業株式会社が「ウィザードゲル(自己修復性ポリマーゲル)」を共同開発され、販売されております。自己修復性という優位な性能に加え、耐乾燥性、高伸縮性、高靱性など、様々な機能を兼ねそろえたヒドロゲルとなっています。 (プロモーション動画→ https://youtu.be/gwVULr54l5Y )

記・企画委員 名越 応昇(三菱製紙)


次回(第73回年末スペシャル)は11月22日(木)に開催予定です。詳しくは開催案内をご覧ください。