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第74回 イメージングカフェ レポート |
2019年1月25日(金)、東京工業大学キャンパス・イノベーションセンターにて第74回イメージングカフェを開催しました。講師には、株式会社ポーラファルマより遠藤 哲哉氏、増田 孝明氏のお二方をお迎えし、『医薬品開発とインクジェット技術の応用性』のタイトルでご講義いただきました。参加者は32名(講師・委員含む)でした。
今回のご講演では、遠藤氏よりポーラファルマ社の紹介、医薬品開発概論、実際の開発事例について、増田氏よりインクジェット技術の医薬品開発への応用についてお話しいただきました。ポーラファルマ社は皮膚に特化した製薬会社であり、外用薬の開発に注力されています。日本では2種しかない外用爪水虫用の薬の一つ「ルコナック」や、ガスを使わずに泡を作る日本で唯一の技術などが紹介されました。
続いて、医薬品開発の大きな流れについて紹介いただきました。新薬の開発には10年以上の期間と200〜300億円もの費用がかかること、成功確率は3万分の1であること等が示され、参加者の方々からは驚きの表情が伺えました。また、新薬の承認申請にあたっては様々な基準や法令の遵守が必要であることも紹介され、人の命に関わる開発活動の重みを垣間見ることができました。
次に、ポーラファルマ社の開発事例について、(1)必要な患部に必要な薬を届ける(ドラッグデリバリー)、(2)患者さんに気持ち良く使ってもらう(ユーザビリティー)の二つの観点から紹介いただきました。
前者はルリコン軟膏という抗真菌薬の開発事例でした。患者さんの状態によって心地良く使える薬の性状が異なることから、既に発売されていたクリームおよび液の剤形に加えて軟膏の開発が行われました。新剤形を追加するためには既存の剤形と生物学的に同等である(=薬物が作用部位に到達する速度と量が同等である)ことが承認の要件となるため、これを実現するために軟膏剤のタイプ選定からスタートし、実に200以上の処方を試作評価した結果、現在の処方にたどり着いたそうです。
また、後者はアセチロールクリームという角化症治療剤の開発事例でした。この中では「皮膚への延び、なじみの良い使用感」を目指した開発が行われた後の、アンケート調査による快適性の検証とその要因についての考察が紹介されました。快適性(心地よさ)に加えて延展性(塗り広げやすさ)、におい、粘稠性(べたつき)、白化の計5項目をSD法によりそれぞれ9段階で数値化し、標準薬(先発品)を5とした際の優劣を評価した結果、アセチロールクリームは他の製品に比べて快適性の数値が優れていることが検証されました。また、使用感の要因としては展延性(高)、粘稠性(低)、白化(弱)との相関が高くなっていることが示されました。最後に、インクジェット技術の医薬品開発への応用例についてお話しいただきました。
まず方式としては原薬の物性を調整できること、原薬が熱に弱い有機物である場合が多いことの二点に対する優位性から、吐出量の精度が良く熱的負荷も小さいピエゾ方式がより適しているとの事でした。続いて、医薬品の開発プロセスの中でインクジェット技術が応用可能なステージはほぼ全域に渡っていることが紹介されました。
例えば有効成分探索の段階では、化合物の活性をより精度良く見ることができるマイクロアレイを作製することや、バイオプリントにより細胞を高精度かつ再現性良く多次元的に培養することが可能となります。また、開発段階ではドラッグデリバリー改善に向けた原薬の微粒子化や製剤の複雑形状化が容易にでき、生産段階では造粒・乾燥・分級工程の統一化が図れる等、様々なメリットを提供することができます。更に実際の製品に対しても、従来のレーザー刻印では不可能であった素錠への印刷や硬度が低い錠剤、面積の狭い錠剤側面への印刷が可能となるなど、多くの場面でインクジェット技術の特徴が生かされていました。参加者の多くは医薬品開発の実際について普段あまり触れる機会がないため、興味深く講義に耳を傾けられていました。また、今回の数多くの事例紹介を通じて、改めて医薬品の開発プロセスとインクジェット技術との相性の良さを認識できました。今後更に両者の融合が進むことを期待したく思います。
記・企画委員 中井 洋志(リコー)
次回(第75回)は3月8日(金)に開催予定です。詳しくは開催案内をご覧ください。