第76回 イメージングカフェ レポート


    【ご参考】第76回募集案内


2019年4月19日(金)、東京工業大学キャンパス・イノベーションセンター(田町)にて第76回イメージングカフェを開催しました。講師には、日本製紙株式会社 技術調査役の内村 元一様をお迎えし、「紙でできることは紙で −パッケージ業界動向と持続可能なパッケージ素材の開発について−」のタイトルでお話いただきました。参加者は33名(講師・委員含む) でした。

まず、日本製紙の取り組みについてお話がありました。「総合バイオマス企業」を理念として掲げ、成長分野であるパッケージ事業において2016年にパッケージング・コミュニケーションセンターを新設されました。続いて、2018年には紙化ソリューション推進室を発足させ、「紙でできることは紙で」を合言葉に、環境への貢献も含めて「紙化」の様々なニーズに対応を始められている、とのことです。
パッケージがもっている ➀保護性、➁利便性、➂情報伝達、という3つの大きな役割についてのお話から説き起こし、それぞれにおける詳細なご説明をいただきました。

次に、パッケージ分野において世界で今、何が起こっているか、についてお話がありました。
2016年のダボス会議では、海洋プラスチックが引き起こしている大きな問題について報告されました。毎年880万t分のプラスチックが海に流出されており、2050年にはこのままの状況が進むと海の魚の量を上回る計算となる、とのことです。そのため、海など自然界へプラスチックの流出を防ぐ対策の強化が急務、との内容でした。
また、2018年のダボス会議では、「サステナブル・パッケージ」はリテール/消費財メーカーの責務、との警告・主導がされました。そのため、英エレン・マッカーサー財団から、グローバル企業11社(コカ・コーラ、ペプシコ、エビアン、ウォルマート、ユニリーバ、ロレアル、マース、マークス&スペンサー、エコベール、アムコール、Werner & Mertz) が2025年までに全パッケージを再利用、リサイクル、コンポスト(堆肥化)可能な素材に変えることを表明していると発表されたという内容などについてご説明されました。これら11社のプラスチック使用量は年間600万t以上に上り、インパクトはかなり大きかったようです。
なお、世界の潮流として、➀使い捨て容器や器具は禁止もしくは代替素材へ、➁商品包装はリサイクル可能な設計へ、➂シングルユースプラスチック(SUP)から再資源化へ、と向かっているとのことです。

このようにパッケージを取り巻く課題として、サステナビリティ、気候変動、廃棄物問題等が普遍的に挙げられます。これを紙で代替すれば、再生可能資源、カーボンニュートラル、生分解可能となり、課題解決に貢献できます。日本製紙はそのような考えから紙化ソリューションとして取り組みを始められたそうです。続いて、紙化ソリューションの具体例として、簡単に差し替えができる容器「SPOPS」、紙製バリア素材「シールドプラス」についてご紹介いただきました。

シールドプラスは紙基材に片面バリア塗工した紙製のバリア素材となっています。そもそも、紙は透気性の高い素材であるため、包材にガスバリア性を持たせるためにはアルミやプラスチックを基材としたバリア素材をラミネートするのが一般的な手法です。それを水系の塗工技術(例えばバインダー塗工)にて高いバリア性を実現させたことは非常に画期的です。また、ラミネートのようなコンバーターを通さずに、製紙会社自身が既存の設備(抄紙機や塗工機)で付加価値を出せるという点もポイントとなっています。なお、バリア性をもう一段アップしたハイバリアグレードのシールドプラス・プレミアも最近リリースし、非常に反響が大きいとのことでした。
シールドプラスの採用事例として、➀オリジナルシリアルを紙管の印刷含めて簡単に作れるサービスの「Manalima」、➁長良園の「もっとやさしい 鵜飼せんべい 」の個包装袋、などについてご紹介いただきました。

最後に、日本製紙が描くパッケージの将来像は、包装資材(紙、インキ、接着剤など)、加工技術、包装機械におけるそれぞれの技術が進化・連携して持続可能なパッケージを仕上げていくこと、と述べられておりました。
地球が悲鳴を上げているので、できることから少しずつ、オールバイオマス化を目指し、環境に貢献していかねばならない、という内村様の熱意が十分伝わるご講演でした。
質疑では、「紙でできることは紙で」というテーマは日本製紙独自のテーマではありますが、非常に響きが良いので日本製紙連合会の脱プラスチックに対する合言葉にしたらどうか、との意見も聞かれました。

記・企画委員 名越 応昇(三菱製紙)  


次回(第77回)は5月24日(金)に開催予定です。詳しくは開催案内をご覧ください。