第89回 イメージングカフェ レポート


  【ご参考】第89回募集案内


2021年7月21日(水)19:00〜20:30に、第89回イメージングカフェをZoomにてOnline開催しました。今回は講師として工学院大学 工学部機械システム工学科の鈴木 健司先生をお招きし、『生物の表面機能とバイオミメティクス』と題してご講演いただきました。参加者は20名(講師、企画委員含む)でした。
また、ご講演の後にはZoomのブレイクアウトルームを利用した情報交換会も実施し、よりフランクな雰囲気の中で議論を深めることができました。

表紙鈴木先生はマイクロ技術を使ってロボットを作製するにあたり、昆虫を手本にできないかというお考えを持たれ検討されてきました。昆虫は体の形を変えながら環境に適応し続けてきた生物で、地球上では最も多くの種が生存しています。その進化の過程で発現した表面構造や、昆虫ならではの信号伝達/動作伝達の単純性に着目し、「小さいからこそできる機能を昆虫に学び、ロボットで再現する」ことを念頭に研究を進められています。

バイオミメティクス(生物模倣)は1950年代に提唱され、現在までに様々な検討がなされてきました。野生ゴボウやオナモミの実を参考としたマジックテープや、カワセミの嘴を模倣してトンネル突入時の空気抵抗を低減した新幹線の先頭車両形状などはよく知られた事例です。近年では特に表面形状に着目した新材料開発が盛んであり、マイクロ+ナノの階層構造によって様々な撥水効果が得られることがわかっています。他にも、蛾の複眼を模倣したモスアイ構造が反射防止フイルムに応用されたり、カタツムリの殻の構造が外壁材に利用されたりと、適用先は広がり続けています。

集合写真先生はこのバイオミメティクスを壁面歩行ロボット、水面移動ロボット、飛翔ロボットなどに適用されており、その具体例について紹介いただきました。
壁面歩行ロボットに対してはアリの脚が参考となっています。アリの脚には付着パッドがあり、そこから分泌される液体の粘性や表面張力、さらには付着パッドの変形や摩擦も利用して付着力が確保されているようです。これを元に、昆虫を模した10gほどのロボットでは、脚先に摩擦力の高いシリコーンゴムを利用し、かつ腹部に設けたパッドから水を供給して表面張力を得ることで、垂直面を歩行することが可能となりました。ただ、水を連続的に供給することが難しく、パッドの表面が乾くと落ちてしまいます。アリは粘液を分泌し続けることで表面の自己修復作用を得ている点が大きな特徴となっており、そこを人工的に再現するのが難しいとのことでした。
同様に、水面移動ロボットに対してはアメンボ、飛翔ロボットに対してはチョウ/トンボ/ハチドリを参考にされており、実際に製作されたロボットの動きと合わせてご説明いただきました。

昆虫サイズのロボットにはサイズが微小で軽いが故に落ちても壊れないという大きなメリットがあります。一方でロボットでは寸法μm単位/重さmg単位の筐体にバッテリーを積むことが難しいため、駆動力を得るためのエネルギー源をどうするかが大きな課題なのだそうです。これに対しては、例えばカプセル内視鏡の場合、動きを磁力などで外部から制御する使い方なども考えられています。

今回のご講演を通じて、表面形状と機能の関係について理解が深まったと同時に、生物の不思議さや奥深さを感じずにはいられませんでした。また、「小さい」ことを生かしたロボットが活躍できる場面は色々と想定されることから、今後の技術の発展を大いに期待したく思います。

記・企画委員長 中井 洋志(リコー)


次回(第90回)は9月17日(金)に開催予定です。詳しくは
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