第93回 イメージングカフェ レポート


  【ご参考】第93回募集案内


2022年 3月18日(金) 19:00より、オンラインにて第93回イメージングカフェを開催しました(参加者16名 *委員・講師含む)。今回は「イメージング分野にも人間中心設計を〜 UX重視で新たな価値を切り拓く〜」とのタイトルで、株式会社日本HPの上林昭様にご講演いただきました。
集合写真上林様は、長年、電子写真を中心としたプリンティング技術の開発に従事する傍ら、人間中心設計推進機構認定人間中心設計専門家、東京都立産業技術大学院大学認定登録講師/客員研究員としても御活躍されており、今回、上林さんが作成に携われた人間中心設計入門編の抜粋やその中でプリンティングに関する事例の紹介をされました。

最初に人間中心設計HCD;Human Centered Design)とは、「使う人や利用状況について丁寧に把握し、より有効で使いやすい、満足度の高い製品やサービスを提供するための一連の活動プロセス」とのことで、HCDが目指すのは、「うれしい経験」をできるだけ豊かにし、「にがい経験」をできるだけ少なくしようとする設計への取り組みとのお話がありました。
例として、タッチパネルが高い位置にあり子供が操作にし難い自動販売機など、メーカーがユーザーのために作ったものがユーザーにとって逆に使用し難くなることがあるとの話がありました。
また、上林様自身が過去、トナーの開発で試作品の処方(パラーメータ)をデータベースに記録することを義務付けられていましたが、抜け漏れが多く、後に正確な処方が分からなくなる事例が多発したそうです。それを解決するため、配合条件や試作時期などの処方をデータベースに全て入力すると、そのデータを基に、従来手書きだった、各試作トナーの物性値や様々な実験記録シート、試作トナーのボトルに貼るラベルなどを自動的に印刷する仕組みを構築されたそうです。それらの印刷物を得られるという「うれしい体験」が、データベースの記入が面倒という「にがい体験」を上回り、データベースの記入漏れがなくなって試作品のトレースができるようになるという、本来のデータベースの目的を「うれしい体験」として達成できたとのお話もありました。

次にHCDを考えるにあたって、自社製品(サービス)の対象ユーザーはどういった人たちだろうか?を考えてみることが重要であり、直接的なユーザーだけでなく、関係者(広義のユーザー→人間)にどのように関わってくるかを考える必要がある。その捉え方として、特性の多様性、指向性に関する多様性、状況や環境に関する多様性を考慮して、どこまでをターゲットにするかが大事とのことでした。MRI(Magnetic Resonance Imaging)の事例を紹介されました。最初、技術者は、病院の検査技師が患者を非接触で検査ができる人のために良いものになると考えて設計したが、子供の患者にとっては無機質な空洞に入る「恐怖と苦痛の体験」になってしまい、そこで、海賊船をモチーフにしたラッピングをすることで、「期待と冒険の体験」に変え、子供にも喜んで検査を受けられるにしたとのことです。設計の対象者を検査技師だけでなく、子供の患者や親にも広げることで「にがい経験」を「うれしい経験」にすることができたお話でした。

さらにHCDでは、「有効で効率的に目標達成を可能にすることでユーザーの満足度を向上する」との考えのもと、HCDサイクルと言われる、

➀ ユーザーの利用状況の把握と明示

➁ ユーザーの要求事項の明確化

➂ ユーザーの要求事項を満足させる設計による解決策の作成

➃ 要求事項に対する設計の評価

以上のサイクルを回しながらスパイラルアップし、要求事項に適合していく(実装)進め方の説明があり、如何にHCDサイクルを小さく高速で回すかが成功のポイントである。それにより、ユーザビリティが向上し、UX(ユーザー体験)が向上するとのことでした。

最後にGood Design賞を受賞したMFPの開発初期段階でHCD活動を導入してメンテナンス性を向上した例の紹介もありました。

お話を聞いて、様々な場面でHCDの考えは大切であり、ユーザーや関係者(人)がうれしいと思えるような設計を上手くイメージング技術やDXなども活用しながら考えていきたいと感じました。

記・企画委員 森下浩延(出光興産)


次回(第94回)は5月27日(金)に開催予定です。詳しくは
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