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第95回 イメージングカフェ レポート |
2022年7月22日(金) に第95回イメージングカフェサマースペシャルを開催しました。今回は山形大学(米沢)での現地参加とZOOMでのオンライン参加とを組み合わせた初のハイブリッド開催のイメージングカフェとなりました。(参加者39名 ※委員・講師含む、うち現地参加8名、オンライン参加19名)
2017年に設立された山形大学インクジェット開発センターや関連部門を多元ライブ中継で結び、研究設備や取組みを紹介していただきました。ライブ中継に先立ち、現地参加者は特典として第1部として山形大学の有機エレクトロニクスイノベーションセンター、有機材料事業創出センター、およびスマート未来ハウスの見学、インクジェットの最新トレンドに関するセミナーに参加いただきました。
全員参加の第2部では、まず最初に酒井センター長からインクジェット開発センターの活動紹介があり、山形大学の企業との共同研究費が2011年から伸び率が全国1位で2016年から2年連続11位となり早稲田大学を上回った事、この共同研究費の90%が有機材料システム分野であった事などが紹介されました。これは山形大学の結城学長が思い切った選択と集中を進め、城戸先生が有機ELの種をまいた事に始まるとのことでした。
その後、有機エレクトロニクス研究センターを始めとする8箇所の研究拠点の整備を行い、基礎研究の社会実装までの実用研究をワンストップで大学と企業とのオープンイノベーションで進める事を目指してきたとの事です。(H30年度オープンイノベーション機構の整備事業支援対象大学)次にインクジェットの開発史をふり返り、液滴サイズに代表される急速な技術の進歩と、カシオQV10とPM-700Cプリンターに始まるデジタル化によるホームプリント市場の熟成、そしてiPad発売以後のプリンター市場の急速な縮小を経験してきた事が紹介されました。
これまでのグラフィック分野のサプライチェーンでは、入口は各プリンターメーカーやインクメーカーに限られ、出口もコンシューマーや印刷会社に限られますが、デジタルファブリケーション分野では、入口の材料・インクメーカーも、出口分野の半導体、医療、アパレルも多岐に渡るため、オープンイノベーションによる連携が重要です。しかしこれまではその連携が充分でないと感じていた事がインクジェット開発センターの設立に繋がった事が述べられました。インクジェット開発センターの所属する有機エレクトロニクスイノベーションセンターは外部資金独立採算運営の日本版Fraunhoferを目指しているとの事です。インクジェット開発センターは、コンソーシアム、研究会、個別共同研究、学術指導、標準化など多岐にわたる形態で産学連携活動を推進しています。コンソーシアムでは、インクジェット基盤技術であるインクレオロジー物性と吐出特性の解析や高粘度インク用ヘッドの開発、シミュレーションによる飛翔解析、精密重合を用いた顔料の分散技術の開発など、2018年からこれまで多くのテーマで活動を行っています。インクジェット研究会では、年に10回以上のセミナーの他、リコーとエプソンのピエゾヘッドの違い、マルチパルス設計などの、駆動波形設計の実習コースを開催しているとの事です。研究会は年会費100万円ですが、協力会員も含めて22社が参加しているそうです。
紹介の最後には、国際標準化の取り組みや、今後重要となる技術者のリカレント教育に関して、社会人のための博士課程の早期終了制度の紹介もありました。後半の研究室見学も多拠点を結んだ中継で見どころ満載でした。飛翔インクの速度と体積が分り波形設計に用いるインク観察システムから始まり、発光時間が数ナノ秒のパルスレーザーを使い高分解能での飛翔インクの観察が可能な同期型のシステム、透明なOHPシートの裏側からの観察でインクの着弾からの広がりや、インク同士の合一が観測できる着弾インクの挙動観察システムなど、次々と研究開発設備が紹介されました。湿度制御してヘッドのノズルの乾燥を高速カメラで観察するシステムでは、実演で3秒放置で真っすぐ飛ばなくなるヘッドに、液滴が飛ばない程度の電圧振動をかけてノズルインク表面を揺らし60秒程度まで停止時間を延ばすデモが行われ、ヘッド内でのインクの撹拌が乾燥に対して有効な事を示す興味深いものでした。
インク実験エリアでは、インク物性の評価装置の紹介がありました。白インクに代表される分散系インクの自然沈降での沈降速度を評価する装置(遠心分離機を用いた沈降速度評価は実際の系とは異なっているそうです)や、バブルを使う動的表面張力計、そして通常の装置より2桁高周波側の計測が可能な粘弾性計TriPAVは少量で評価可能な優れもので、飛翔液滴のしっぽの挙動解析に役立つそうです。別実験室ではクリーンブースが設置され、IJヘッドの組み立てが可能で、IJスコープやレーザードップラー変位計を用いてすぐに評価が可能だそうです。同じくブース内では東京大学の染谷研究室から借りているインクジェット描画装置IJ-DESKでの銀ナノインクの描画デモがありました。
材料実験室では、精密重合による 顔料分散剤 の合成を行っています。
重合末端のドーマントを除去と同時に変性する手法により、顔料分散剤の末端構造が分散能力に与える影響を調査しているそうです。
末端構造は、高分子の分子量を小数点以下2桁まで測定可能なSpiral MALDI-TOFMSを用いて同定しています。試料量も0.2mg程度の少量で評価可能であり、今後大学内外への利用を考えているとのことです。最後はお台場の日本科学未来館にある研究エリアと結び、ゲルプリンターで柔らかい造形物が作成可能な3Dプリンターやフードプリンターに関する紹介がありました。
ディスカッションでは装置の貸し出しに関する質問があり、産学連携契約がある企業か一般か、スタッフが操作するか自分で操作するかで異なるが、学術指導の範囲内で様々な仕組みを用意しているとの事でした。今後、インクジェット開発センターではモノ作りの支援を加速するために、インテグレーターとの連携を図って行きたいとの事です。
研究室紹介は30分押しの充実した内容でリモート参加者は満足度が高かいものになったと思いますが、現地参加メンバーはスケジュールがタイトとなり、もう少し余裕が欲しかったとの要望がありました。個人的には、弊社の元マネージャー陣が楽しそうに装置説明を行っているのを見て、うらやましく感じてしまいました。
記・企画委員 森川 尚(富士フイルムBI)
次回(第96回)は9月22日(木)に開催予定です。詳しくは開催案内をご覧ください。