2008年度日本画像学会シンポジウム

『電子写真用材料の新展開』

Abstract
講演者題目&要約
河野信明
キヤノン株式会社
『形態観察技術の進化がもたらすトナーの内部材料分散観察手法』
トナー中の材料分散は性能に大きく影響するため、分散状態を把握することは特に重要である。材料分散の観察方法は、ミクロトーム等で薄片化後、透過型電子顕微鏡で観察する手法が主流であるが、高度な専門技術を要し簡単に観察できる手法ではない。一方、走査型電子顕微鏡は、ここ最近低加速電圧での反射電子像が得られる装置が出現している。本手法に簡易に断面を作成する手法を組み合わせると、比較的簡易に材料分散が高分解能で観察可能である。さらにFIB加工機能を組み合わされた装置も開発され、連続断面像から分散状態を三次元像として取得可能である。本報告では、これらの装置で分散状態観察がどの程度まで可能か紹介する。
岩田周行
株式会社リコー
『走査型透過X線顕微鏡によるトナーの観察技術』
トナーの帯電や定着などの各機能の発現を担っているのは、トナー中に含まれる構成成分であり、トナー中の成分の分布状態は重要な分析項目である。これまで、透過型電子顕微鏡(TEM)が、成分の分布状態を調べるために用いられてきた。TEMでは、有機成分間の吸収や散乱に差が無く、TEM像だけで様々な成分を見分けることが難しかった。X線吸収スペクトルの炭素の吸収端近傍構造(NEXAFS)は、化学結合状態を反映するため、有機成分間で異なる。このNEXAFSと顕微観察法を併せ持つのが、走査型透過X線顕微鏡(STXM)である。ここでは、はじめにTEM観察例を示した後、STXMを粉砕トナーなどに応用した例を紹介する。
平山順哉
コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社
『トナーの付着力評価技術とその応用』
電子写真装置では、電界によってトナーを部材間で移動させ、画像を形成する。故に、トナーと部材間の付着力を評価することは、電子写真装置やそこで使用される機能部材を設計する上できわめて重要である。我々はトナーの付着力分布を簡便に測定できる装置を独自に開発し、これまで多くの実務で有効活用してきた。本講演では、付着力分布測定装置の原理や装置構成を解説するとともに、実際の設計業務での活用例を紹介する。
武田布千雄
東北リコー株式会社
『電子写真用素子の機能性評価』
市場から電子写真装置の高速・高画質化と長寿命/高耐久化が求められる一方、技術開発にはますます効率化が求められている。ここで大きな課題になるのが、技術評価の期間と精度である。時間がかかる連続耐久試験では、精度を高めようとすれば、費用と時間が必要である。これを簡略化して行えば、市場トラブル発生の危険性が高まる。品質工学には、設計案・材料処方・技術的アイディア等の評価や製品間比較を効率的かつ定量的に行う枠組みについての提案がある。今回は、寿命推定、設計間安定性比較、特性の最適化などに関わる品質工学の基本的な考え方とその応用について、電子写真用の高圧デバイスや感光体の評価、材料設計などの、我々が取り組んだ事例を引きながら紹介する。
荒牧晋司・藤井章照
三菱化学株式会社
『電子写真感光体から有機エレクトロニクスへ』
電子写真感光体は、電気を通す有機材料として始めて実用化されたもので、三菱化学も1981年に上市以来事業を継続している。そこで利用された光キャリア生成及びキャリア輸送の機能と塗布製膜による製膜技術を材料及びプロセス面から追求することにより、有機ELやトランジスタ、太陽電池といった有機電子デバイスに応用されるまでになってきた。そこでは、材料の高純度化、分子配向による高性能化、組み合わせる材料や層構成による機能発現などの手法が用いられている。このような観点から、電子写真感光体の推移と、最新の有機エレクトロニクスデバイス技術について紹介し、有機半導体の今後の展開を展望する。
半那純一
東京工業大学
『高移動度化をめぐる有機材料設計のアプローチ』
電子材料の有効性は用いるデバイスが要求する機能によってはかられる。基礎物性の点では感光体用材料の場合はキャリアのημτ(η:キャリア生成効率、μ:移動度、τ:キャリア寿命)によって決定される。感光体の複写速度から要求される特性から見ると、現状ではほぼその要求を満たし、移動度も単一物質の薄膜においては10-3cm2/Vsを超え、感光体においても10-6cm2/Vsは確保されている。しかしながら、電子写真感光体特性の格段の高性能化や感光体以外のデバイスへの適用を考えると、有機半導体が示す基礎物性、特に、移動度の改善は不可欠となる。本講演では有機半導体の高移動度化をめぐるこれまでの材料設計のアプローチを振り返り、新しいアプローチとしての分子配向制御の有効性とその意味について実証的に議論する。
時任静士
NHK放送技術研究所
『電荷輸送と有機ELデバイス』
非常に薄い有機膜の積層からなる有機ELデバイスはフラットパネルディスプレイや薄型固体照明としての用途展開が期待されている。この有機ELデバイスの発光効率を左右している因子として、デバイスを構成する有機薄膜中の電子および正孔の輸送性がある。本講演では、TOF法で測定した芳香族アミン、金属錯体、フッ素系化合物等のアモルファス薄膜における移動度を紹介し、その電荷輸送性と有機EL素子特性との関係を議論する。
平本昌宏
分子科学研究所
『高純度有機半導体を用いた有機薄膜太陽池』
有機太陽電池は、近年効率の向上が著しく5%を越える値も報告されるようになっている。数年内には10%を越える可能性も出てきており、次世代の太陽電池として関心が集まっている。本講演では、低分子系の有機薄膜太陽電池について、その原理、ナノ構造制御、有機半導体の超高純度化の効果、長期動作テスト、開放端電圧を決める因子、高効率化への指針、等について述べる。