創立以前の動向
1938年10月22日、米国のC. Carlsonは、自ら発明した電子写真法による最初の画像形成に成功しました。その後、Battel Memorial InstituteやXerox社で重要な研究開発が相次ぎ、1950年にはXerox社から最初の商品Model Aが発表されました。1954年にはRCA社でElectrofaxが発明され、技術供与を開始。そして1959年にはハロイド社から初の商用普通紙複写機Xerox 914が誕生しました。
この画期的な発明のニュースが知られるにつれ、日本でも電子写真複写法の重要性が認識され、1954年頃から大学や企業で調査、研究が開始されました。当時の日本は、戦後を脱却し、経済が高度成長期に入り、複写機についても、いくつかの企業で技術導入の計画が進められるようになりました。
学会創立期
1958年6月30日、本郷赤門の学士会館で日本の電子写真研究の推進母体となる学会設立準備会が開催され、「電子写真懇話会」が発足しました。発足当時のメンバー、井上英一(東工大)、木脇久智(電気試験所)、三浦顕一(都立大)、野崎弘(東大生産研)、吉田浩二(大阪府大)、坂田俊文(東大生産研)、吉永忠司(東大生産研)の7氏を中心に参加者は24名であったとのことです。
1959年3月には学会誌「電子写真 (Electrophotography – The Society Journal -) 」が発刊され、同年6月「電子写真学会」(The society of Electrophotography of Japan)と名称を変更しました。学会は急速に発展し、1959年3月時点で正会員140名、維持会員31社に達しました。
「電子写真」第1巻第1号(1959)
巻 頭 言
現代の生活において写真の果たす役目は甚だ大きく、しかも日増しにその分野は拡がってゆく。従来から写真を使用していた領域はしばらくおいて現在非常に需要が伸び、また近い将来さらにのびるであろうという写真の用途にはつぎのようなものが考えられる。第1は事務用写真は最も大きい位置を占めるであろう。第2は医学用写真でX線、オートラジオグラフィーなどを含む。第3は原子核用写真である。第4はカラーフィルム、ことはカラー印画であろう。カラーテレビジョンの実用化は近いし、その時にあたってカラーフィルムの用途はさらに増加するであろう。
写真はニエーフスの発明した時は瀝青物質の感光性、今で云えば感光性樹脂を感光主体に用いたものであるが、その後、ダゲール、フォックス・タルボットの頃から約100年間銀塩、ことにハロゲン銀塩が感光物質の主流をなして来た。ところが最近ある種の写真にハロゲン銀以外の感光性物質が使用されるようになって来た。その一つは電子写真であってほぼ10年以来のことであるが近年とみに発達の速度を増してきた。他に注目すべきものとしてそれ自体感光性はないが記録紙の代りに使われるビデオ・テープの種類、また主として印刷用製版材料に使われると思われる有機感光性樹脂がある。
電子写真に要求されるものは迅速にして正確な記録という特性、従来の水溶液を使用する現像を用いずに済む点、また副次的に安価であるという特徴もあろう。しかし反面未だ銀塩写真に劣る多くの点がある。解像力小なること、中間調が現わせぬことなどはその最も研究を要する点であろう。かように電子写真には解決すべき多くの問題があり、物理、化学、機械、電気の協力を経ずしては困難であるし、またその考えられる応用範囲はテレビジョン、印刷、映画、医学など甚だ広い。そこで関連した分野の研究者が集まって、はっきりした「電子写真」という目的をもって研究を進め、技術情報を交換する目的のためにつくられたのが「電子写真懇話会」である。この目的を達成するために、関連する事項に関する講演会を開き、報告、資料を載せる会誌を発行する。また世界の電子写真または関連事項についての特許を集めた特許集を編集する。また電子写真に関する感度表示についての委員会をもうけた。しかし本会の仕事はどこまでも研究及び技術情報の交換であって業界の仕事には直接関係しないものであるから以後「電子写真学会」という名にしようと思う。この会が編集した第1の会誌が本号である。時間のかかった割に内容が少いとか、色々の御批判があると思うが遠慮なくおっしゃって頂いて第2号からさらによいものにする参考にしたいと思う。
会長 菊池 真一
成長と普及
1975年、米国連邦取引委員会裁定によりXerox特許ライセンスの供与が認められると、国内各社の複写機開発が活発化し、本学会は電子写真材料、電子写真プロセス、画像記録を主とする専門学会として、研究、開発者の情報共有の場としての役割のほか、講習会(第1回は1981年12月)など啓蒙・教育活動もとり入れ、複写機産業の伸長とともに発展していきます。
アナログからデジタルへ
1980年代には、コンピューターの普及に伴い、デジタル化された画像情報を出力するため、電子写真法以外のプリンティング技術、デジタル画像処理技術、紙媒体以外のデジタル画像表示デバイスなどの新たな研究対象を取り込んできました。1984年に、第1回ノンインパクトプリンティング(NIP)技術シンポジウムが開催され、第4回の開催の後、年次大会と併合し「Japan Hardcopy」の名称に改名し、今日の「Imaging Conference JAPAN」へと引き継がれています。
プリンティングからイメージングへ
電子写真を専門領域として発足した本学会は、プリンティング技術のみならず、エレクトロニックイメージングも含む多様なデジタル画像技術領域をカバーする学会へと成長し、1998年に創立40周年を迎えるにあたり、学会名を「日本画像学会」といたしました。2000年頃からアナログ複写機からデジタル複合機への転換、小型カラープリンターの普及を背景に会勢は拡大し、2007年度には個人会員数は約1200名のピークに達しました。
学会ホームページの開設
日本画像学会では、1997年に学会ホームページを立ち上げ、委員会組織の情報や、各種イベントの開催案内をタイムリーに発信してきました。その後、2007年にコンテンツの拡充とともに画面デザインを一新、学会誌のデジタル配信や論文の電子投稿、イベントへのweb参加登録など各種ITサービスの窓口としての機能も充実させてきました。2023年、増大し続けるコンテンツや情報を整理し、見やすく、必要な情報にたどり着きやすいページ構成をめざし、現在の形となりました。
新たな領域への挑戦
2002年より、フロンティアセミナーという名称の講演会が企画され、電子ペーパーやデジタルファブリケーションといったイメージング技術の新領域を開拓し、情報収集と相互交流の場を設けてきました。フロンティアセミナーは2008年の第4回をもって一旦休会となりましたが、イメージングの新領域を開拓する活動は今も続いています。
国際化
本学会では1988年以来、IS&Tほか海外の学会と連携して4~5年の周期で国際会議を開催してきています。創立50周年となる2008年に開催された国際会議PPIC ’08 (Pan-Pacific Imaging Conference ’08)はアルカディア市ヶ谷(私学会館)にて盛大に行われました。また、50周年を記念して本学会のロゴマークが今日のものに更新されました。
法人化、連合会
2010年に法人設立登記を行い「一般社団法人日本画像学会」として新たに出発しました。2014年、本学会をはじめとする画像関連諸分野の学協会が集い,統合的な画像の取り扱いに立脚した画像技術の新たな展開に寄与する情報の発信と議論の場を提供することを目的に、「画像関連学会連合会」が設立されました。 この連合会の協同事業として、国際会議ICAI2015(The 1st International Conference on Advanced Imaging 2015)を 2015 年 6 月に開催し、画像諸分野に関連する国内外の代表としての活動を続けています。
これからの画像学会
コンピューターの進化がさらに進み、人間の知覚レベルを超える情報量のデジタル画像データが扱えるようになった今日、画像技術はさらに高度化する一方、生活シーンで必要とされる画像情報のあり方も変化しています。本学会では2012年に学会としての長期ビジョンVision55を策定し、2018年にVision 2030として改訂、新たな挑戦が続けられています。
詳しくは、こちらもご参照ください。
北村孝司、木村正利:「日本画像学会の歩み(概要)」学会誌57, pp.21-28 (2018)
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