【page2026 × Imaging NEXT】AI時代にあえて「紙」を語る理由 — デジタルが取りこぼした“手触り”という最強のUX -

みなさん、こんにちは。 さて、いよいよ印刷メディアビジネスの総合イベント「page2026」が近づいてきましたね。今年の会期は、2月18日(水)から20日(金)です。事前登録すれば無料で参加できます!

今回は、日本画像学会の「page2026」への出展と「Imaging NEXT」の連携企画として、ちょっと挑発的かつ本質的なテーマを投げかけたいと思います。

最近、生成AIでアプリが数分で作れるようになり(いわゆるVibe Codingですね)、必要な情報は「要約して」と頼めば30秒で手に入る時代になりました。 こんなに効率的で便利な世界になったのに、なぜぼくたちは、わざわざ「印刷された」パンフレットを手に取ったり、お気に入りの画集のページをめくったりすることに「快感」を覚えるんでしょうか?

今日は、技術者や業界関係者の皆さんにこそ考えてほしい、逆説的な話をします。 「デジタルが極まれば極まるほど、フィジカル(物理的なもの=印刷)の価値が爆上がりする」という話です。

これ、単なるノスタルジーじゃありません。これからの印刷ビジネスや技術開発における、かなり生存戦略的な話だと思って聞いてください。

「便利」のその先にあるもの

まず、前提として共有したいのが、「機能的価値」の飽和です。

昔は「速い」「安い」「きれい」であることに絶対的な価値がありました。もちろん、これらも重要ですが、AIやデジタル技術の進化で、ある程度のクオリティは誰もが作れるようになりつつあります。 こうなると何が起きるか。「正解」のコモディティ化です。

ここで重要になるのが、ロベルト・ヴェルガンティさんが提唱する「意味のイノベーション」という視点です。

例えば、ロウソク。

電気照明が普及した時点で、ロウソクの「明かりを灯す」という機能的価値は終わりました。でも、ロウソクは消滅しましたか?

していませんよね。「リラックスする」「特別な時間を演出する」という意味的価値へとシフトして、むしろ高級品として生き残っています。

今、私たちが向き合っている「印刷」の世界でも、これと同じことが起きようとしているんじゃないかと思うんです。

単に情報を伝えるだけなら、PDFでいいし、スマホの画面でいい。

でも、あえて「紙」にする。ここに、情報の伝達を超えた「体験」としての価値が生まれる余地があるわけです。

「推し」のチラシは、なぜ捨てられないのか?

先日、本企画を進めるにあたり、日本画像学会のHさんと議論していた時のことです。彼がふと言った言葉にハッとさせられました。

「コンサートのチラシって、ただの情報媒体なのに、ファンにとっては『宝物』になるよね」と。

これ、すごく本質的だと思いませんか?

デジタルデータは、複製可能です。コピー&ペーストで無限に増やせる。だからこそ、「所有する」という感覚が希薄なんです。

一方で、物質としての紙には「ここにある」という実在感があります。 手触り、重み、インクの匂い、紙のテクスチャ。

これらは、画面越しには絶対に伝わらない情報(UX)です。

AIがどれだけ進化しても、「質感」を作り出すことはできません。 だからこそ、これからの時代、技術者が注力すべきは「いかに効率よく刷るか」だけでなく、「いかに感情を動かす手触りを実装するか」「所有したくなる意味をどう技術で支えるか」なんじゃないでしょうか。

page2026を「意味」の視点で歩いてみる

今年のpage2026、皆さんはどんな視点で会場を回りますか? 最新のデジタル印刷機のスペックや、自動化ソリューションの効率性を見るのはもちろん大事です。

でも、そこにもう一つ、「この技術は、どんな『意味』や『体験』をユーザーに届けられるだろう?」という「HCD(人間中心設計)」のレンズを通して見てみてほしいんです。

  • この加飾技術は、どんな驚きを手に持った人に与えるだろう?
  • このオンデマンド性は、”今この瞬間”を求めるファンにどんな価値を提供できるだろう?

そんな視点で展示を見ると、ただの「機械」や「システム」が、「感動製造装置」に見えてくるかもしれません。

最後に:「ギリギリアウト」を狙う勇気

最後に、これからの業界を面白くするためのキーワードを一つ。 それは「脱・予定調和」であり、「ギリギリアウトを狙う勇気」です。

みんなが「効率化」「最適化」に向かう中で、同じことをやっても埋もれるだけです。 「え、今さら紙でそれをやる?」 「そんな手間かける意味ある?」

そう言われる領域にこそ、次のイノベーションの種が埋まっています。 常識の枠内に収まる「正解」はAIが出してくれます。ぼくたち人間がやるべきは、その枠をちょっとだけ踏み越えて、「一見無駄に見えるけど、なんか面白い」というノイズを作り出すことです。

日本画像学会も、今回のpage2026ではデジタル印刷に関連した出展を行っています。 ぜひ会場で、あるいはImaging NEXTの活動を通じて、「デジタル×フィジカル」の新しい可能性について、一緒に語り合いましょう。

みなさんは、最近何か「手触り」のある体験、しましたか? page2026の会場で、その答えが見つかるかもしれません。

「【page2026 × Imaging NEXT】AI時代にあえて「紙」を語る理由 — デジタルが取りこぼした“手触り”という最強のUX -」への7件のフィードバック

  1. 印刷に対して異なる視点でのご提言有難うございます.本当に,コンサートのチラシって凄くクオリティ高いんですよね.掲載情報は日時,場所,出演者,プログラム,プロフィール,以上.なんですが,アーティストとしてのこだわりと,類似した催しのチラシ間の切磋琢磨の積み上げが凝縮されているかんじが大好きです.アーティストと音楽愛好家がコンサート会場で私服の時を過ごすための媒介者としてチラシはとてもいい仕事をしていると思います.これからの印刷技術がこういった価値を継承し発展させてくれることを切に願いたいです.

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  2. 「デジタル×フィジカル」の新しい可能性という切り口は、何年も前から多くの先駆者が考えてきたように見受けられますが、やっと市場の需要も追い付いてきた感触があります。推し活グッズの展示物を見てそう思いました。印刷業界はこれから、高級品を売るビジネスとして楽しくなってくるのかもしれませんね。

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    • コメントありがとうございます。だいぶ時間が経ってしまいました。
      ホント、そう思います!
      ゲーム会社の友人がキャラクターグッズを作っているのですが、アクリルスタンドの注文単位が数百個程度とのことなので、デジタルでないと対応できないですよね。

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  3. コメントありがとうございます!
    「アーティストと音楽愛好家が過ごす至福の時の媒介者」という表現、素敵ですね。

    おっしゃる通り、コンサートのチラシは単なる「日時のお知らせ」ではありませんよね。紙の厚みや手触り、こだわったデザインそのものが、演奏会への期待を高める「体験の一部」になっているのだと思います。しかも、持ち続けている限り、その体験が続くんですよね。

    page2026の会場に足を運ばれる皆さんには、そんな「人の心を動かす媒介者」としての印刷技術の可能性を、ぜひ探していただけると嬉しいですね。

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    • 私服⇒至福
      でした.お恥ずかしい.webなら書き換えできますが,印刷でやると後悔でしかないところが,印刷の厳しさというか,関係者の見えない努力の重さが印刷物にはあるように感じます.これからはAIが校正してくれて安心して出稿できるようになって,印刷による情報発信の流れもよくなるんでしょうね.

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      • 確かに、印刷とAIは意外と相性がいいのかもsれませんね。
        AIをプリントで活用するアイデアを考えてみると面白そうですね!

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  4. いよいよpage2026が水曜日から始まりますね。例年は同業他社デジタル印刷機メーカーの新製品展示にばかり目が行きがちでしたが、今年は、それをどう使ってビジネスが成り立っているのか、デジタルに足りていない要素は何なのか、とか、今までに無かった視点で展示会を歩いて見るというのはどうでしょうか。考えるヒントとして「AIなら解決できるんじゃない?」と自問してみることをお勧めしたいです。別にAIを信奉してるわけではないですが、こう問うことによって、今までなら絶対無理と思い込んでいた扉を開けてみようかな、と思えるのじゃないでしょうか。自分の脳内で封印された回路を掘り起こせるかもしれませんよ。それは、とっくにあきらめていた子供の頃の夢に出会えた喜びかもしれません。page2026でチャレンジしてみましょう。

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