その選択、本当に「いつも通り」でいいんですか?
「これでよかったのかな…?」私たちは日々、たくさんの選択を繰り返しながら生きています。そして、今の自分は、過去の無数の選択の結果、ここにいるわけです。それはそれで、一つの「世界線」を歩んできた証拠。
でも、もし「なんだか物足りない」「このままじゃ、ちょっとつまらないかも」と感じているなら、それは新しい「世界線」への招待状かもしれません。大きな決断じゃなくてもいいんです。明日のランチをいつもと違う店にしてみる、通勤ルートを一本変えてみる。そんな些細なことで、私たちの日常は少しずつ、でも確実に「ズレ」ていきます。
この「ズレ」、なんだかワクワクしませんか? そして、この感覚、実は新しい技術が生まれたり、研究がブレークスルーしたりする瞬間に似ているんじゃないか、と私は思うんです。
なぜ「ズレ」を恐れ、「いつも通り」を選んでしまうのでしょう?
私たちは、なぜ新しい選択肢に手を伸ばすのをためらってしまうことがあるんでしょうか。
- 今のままでも、とりあえず困ってはいないから?
- 新しいことを試して、失敗するのが怖いから?
- 変化を選ぶこと自体が、面倒だから?
確かに、「いつも通り」は安心感があります。でも、その安心感と引き換えに、新しい発見や出会いのチャンスを逃しているとしたら?
例えば、ある技術者がずっと同じ手法で開発を続けているとします。もちろん、それで一定の成果は出るでしょう。でも、もし彼がほんの少しだけ違うツールを試したり、異分野の論文を読んでみたりしたら? そこに、今までのやり方では思いもよらなかった解決策や、全く新しい製品のアイデアが隠れているかもしれません。「いつも通り」から一歩踏み出すこと、それが「ズレ」を生み出す第一歩です。
「ズレ」が拓く、新しい景色 – 技術者・研究者こそ、日常に「揺らぎ」を
「世界線がズレる」と言うと大げさかもしれませんが、要は「普段と違う行動をとることで、その後の展開が変わってくる」ということです。
いつもの通勤路を変えたら、気になるカフェを見つけた。そこで手に取った専門誌に、自分の研究のヒントになる記事が載っていた。そんな「たまたま」が、実は意図的に作り出せるかもしれません。
これは、まさに研究開発におけるセレンディピティ(偶然の幸運な発見)と似ています。ずっと同じ実験を繰り返すのではなく、少し条件を変えてみる、普段は読まない分野の文献に目を通してみる、異分野の研究者と雑談してみる。そういった「ノイズ」や「揺らぎ」とも言える行動が、思わぬ突破口を開くことがあります。
日本画像学会のような学術団体も、実はこの「ズレ」を意図的に生み出すための絶好の「場」になり得ます。普段は自分の専門分野に閉じこもりがちな技術者や研究者が、学会という場で異なる専門性を持つ人々と出会い、議論を交わす。それこそが、個々の「世界線」を交差させ、新たなイノベーションの芽を育む土壌となるのではないでしょうか。学会の懇親会で隣に座った人が、あなたの次の共同研究者になるかもしれないのですから。
さて、あなたの「世界線」、どうデザインしますか?
今のあなたは、これまでの選択と行動の積み重ね。でも、未来はまだ白紙です。 「たまたまそうなった」のではなく、「自分で選んでズラした結果」だと思える人生の方が、きっと面白い。
それは、日々の研究活動においても同じです。行き詰まりを感じた時こそ、意識的に「いつもと違うこと」を取り入れてみる。それが、あなた自身の成長だけでなく、所属する組織や、ひいては社会全体の技術革新にも繋がっていくのかもしれません。
新しい技術や発見は、いつだって既存の枠組みを少し「ズラす」ことから生まれてきたはずです。
アクションプラン:今日からできる「世界線ずらし」3ステップ
- まず、日常の小さなルーティンを一つだけ変えてみる。 いつもと違う道を通る、普段読まないジャンルの本を手に取る、など何でもOK。
- 次に、あなたの専門分野から少しだけ「はみ出し」てみる。 ちょっと違う分野のセミナーに参加してみる、異分野の友人と自分の研究について話してみる、など。
- そして、学会や研究会では、あえて専門外のセッションを覗いてみる。 新しい視点や、意外な共通点が見つかるかもしれません。日本画像学会のような場を、積極的に「ズレ」を生み出す機会として活用しましょう。
さあ、あなたは明日、どんな「ズレ」を選びますか?
「世界線」という言葉が今流行っているのですね.パラレルワールドが実在するという前提で本来交わらないはずの時空を行き交うときに使われる表現という解釈で合っているでしょうか.
そういえば2020年の第2回複写機遺産のパンフレットの序文に「競合他社間の技術者同士は,同じ時代を生きていながら,お互いに出会うことなくそれぞれの会社の歴史の歯車を回していく,いわばパラレルワールドの住人です」と書いていたのを思い出しました.
https://www.imaging-society-japan.org/others/heritage/Copying_Machine_Heritage_vol2.pdf
普段会わない人との出会いは人生を大きく変えるのには十分な刺激だと思います.
パラレルワールド(並行世界)と同義とお考えいただいて大丈夫です。
第2回複写機遺産のパンフレットのパラレルワールドの例えは、とても上手い表現ですね。
ありがとうございます。「世界線」の最近の用例は息子から教わったのですが、今の人たちは、自分の知らない世界に出くわす機会が昔より格段に多い環境下で生きているのでしょうね。