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2025年度シンポジウム「Imaging Next Generation: 技術の蓄積とAI共創の未来」

      ~「歩み」を知り、「価値」の加速へ~

開催場所:貸会議室内海 2F教室
開催日:2025年12月11日(木)
2025年12月11日(木) に「Imaging Next Generation:技術の蓄積とAI共創の未来」~「歩み」を知り、「価値」の加速へ~と題し、日本画像学会2025年度シンポジウムをリアル会場:貸会議室内海(水道橋)とリモートとのハイブリッド形式で開催しました。毎年恒例の各技術部会によるこの一年の振り返りに加え、本年度も二部構成として生成AIを実践的に使いこなし、画像技術の将来につなげるためのワークショップを実施しました。参加者はリアル会場22名(委員・講師含む)、リモート参加16名の合計38名でした。 【第一部】 電子写真技術部会からは「電子写真技術の最新動向 ~2025年総括~」と題し、ブラザー工業株式会社の鈴木啓太様よりご発表を頂きました。電子写真分野では、既存技術の深化とともに、AIや自動化による「工程の効率化」が大きな潮流となっています。関西万博でのネットプリント活用事例からは、デジタル時代における紙出力の有用性が再確認されました。 技術面では、コニカミノルタの「AccurioPress」による印刷・用紙設定の自動化や、FFBIの「Revoria PRESS」シリーズによる1パス5色印刷など、高付加価値化が進んでいます。また環境面では、ブラザー工業のパルプモールドや京セラの製品包装など、脱プラスチックや環境規制への対応が喫緊の課題として共有されました。さらに特許動向からは、要素開発からシステム開発へのシフトや、キヤノンによる露光技術の出願急増が読み取れること等が紹介されました。 インクジェット技術部会からは「インクジェット技術の最新動向」と題し、理想科学工業株式会社の前坂敏秀様よりご発表を頂きました。インクジェット技術の応用領域は着実に広がっていますが、商業印刷、ラベル、軟包装や3D分野では依然としてデジタル化の余地が多く残されており、多様な印刷媒体への対応が課題であることが述べられました。これに対して例えば軟包装分野では、水性インクにより食品向けの安全性が訴求されているとともに、画像との密着性向上や既存の加工設備との互換性確保が進められています。一方でサイングラフィック分野では多色化と立体物への加飾が進み、付加価値の訴求が活発となっています。また、ホーム・オフィス向けでは大容量タンクモデルが主流となり、環境負荷低減と利便性の両立が図られていること等が紹介されました。 デジタルファブリケーション技術部会(現在休会中)からは「デジタルファブリケーションの最新動向」と題し、山形大学の酒井真理先生よりご発表を頂きました。まず毎年ご紹介いただくガートナーのハイプサイクルにおいては、過度なピークの先がなくなってきており、AIと自動化が競争関係となっているという特徴が語られました。次にデジタルファブリケーションの応用領域についてご紹介いただきました。主要な応用分野は次世代ディスプレイ製造で、QD(量子Dot)-OLED、QD-LEDを用いた技術革新が加速しています。また、カーボンニュートラル社会の実現に向けた役割も重視されています。ペロブスカイト太陽電池や次世代蓄電池の電極製造にインクジェット工法を適用することで、プロセスの効率化と低環境負荷が目指されており、山形大学による高粘度インク対応ヘッドや、Scrona社の超高解像EHDヘッドなど、多様な機能性材料を精密に配置する装置技術がこれを支えています。さらに、自動車の精密塗装や「匂い」のデジタル化といった、新領域への拡大についても紹介いただきました。 電子ペーパー/フレキシブル技術部会からは「電子ペーパー/フレキシブル技術の最新動向」と題し、産業技術総合研究所の吉田学様よりご発表を頂きました。電子ペーパーは物流や小売業界の電子棚札(ESL)を中心に市場が急拡大しており、カラー化や動画対応といった技術革新が進んでいます。低消費電力で視認性が高い一方、動画性能の限界や製造コストが課題です。世界市場は2029年に約360億米ドルに達すると予測されていますが、日本市場の普及は海外に比べ限定的であるとのことです。フレキシブルデバイスでは、折り畳みスマホの普及に加え、生体モニタリングや肌に貼る「電子化粧」など、医療・美容分野への広がりが見られます。また、光や振動、温度差から電力を得るエネルギーハーベスティングは、IoTデバイスのバッテリーレス化を可能にし、持続可能な社会に貢献します。加えて、安全性に優れた全固体電池や高容量なリチウム硫黄電池などの蓄電池技術も紹介されました。 サーマル記録技術部会からは「フォトプリンタ市場と技術の動向~”見る”から”創る”へ 多様化するプリント体験~」と題し、アルプスアルパイン株式会社の川井建様よりご発表を頂きました。フォトプリンタ市場は、SNSの普及と「チェキ」に代表されるアナログ回帰の影響で好調に推移しています。スマホで得た画像を「モノ」として手元に残したい、あるいはクラフト作品として共有したいという需要が、ポータブルプリンタの成長を支えています。 今後は生成AIとの親和性も高く、ユーザーがAIで生成した思い通りの画像を即座に物理的なカードとして出力し、他者と共有するという「創造から共有まで」の新しいプリント体験が定着していくと考えられます。 【第二部】 2025年6月のICJ2025内で好評を博した生成AIワークショップの第2弾として、「生成AI活用のネクストステップ ~『質問』から『実行』へ。AIをパートナーにする実践術~」を実施しました。講師は前回に引き続き、ワークショップデザイナーユニット・グリサンの上林昭氏です。 冒頭では、生成AIを取り巻く最新動向と実務活用のポイントが紹介され、この半年でAIモデルがより深く思考できるようになってきていることや、GoogleやOpenAIなど生成AI各社の競争を背景に技術進化が加速している状況が共有されました。特に、画像生成エンジン「Nano Banana Pro」の進化により画像内の文字表現が可能になるなど、実用性の向上が印象に残りました。 実習では、NotebookLMを用いて資料やWeb情報をソースとして登録し、要約や情報整理、掛け算発想法によるアイデア創出を体験しました。さらに、それらを基に提案書を作成し、イラストを含めたアウトプットまでをAIに作成させる一連の流れを実践的に学びました。 活用例としては、社内情報の集約や検査業務の簡略化、広告・デザイン制作の効率化などが紹介されました。生成AIは、役割設定や構造化を意識するなどプロンプトの工夫により、アイデア出しにとどまらず、実際の作業を任せられる段階に来ている一方で、著作権への配慮の必要性も示されました。生成AIを有効に活用するためには、試行錯誤を重ねながら使いこなしていく姿勢が重要である、ということを改めて認識できたワークショップでした。
報告者:企画委員長 中井 洋志(エトリア株式会社)
現地参加者写真
オンライン参加者写真