会長メッセージ2012.6

半那 純一
【会長への就任にあたって】

(日本画像学会誌、Vol.51, No.4(2012) 「巻頭言」として掲載)

 

  本学会は、2010年、任意団体から「一般社団法人日本画像学会」として、新たなスタートを切った。一般社団法人として初めての学会の運営に尽力された前中山喜萬会長の後を受けて、本学会の会長に就任させて頂くことになった。
  

 本学会との関わりは三十数年の永きにわたる。小職が工学を志し、東工大 故井上英一教授のもとで助手として画像技術に関する研究を始めて以来のことである。当時の学会は、a-Seを中心としたカルコゲナイドを用いた感光体の全盛の時代で、有機感光体の実用化が始まって間もない頃であった。当時見出されたa-Siが新たな感光体材料として注目を集め、研究が行われ始めた時期でもあった。それから30余年、当時、比類の無い光記録技術として確固たる地位を築いていた銀塩写真技術はその地位をデジタル写真技術に取って代わられ、感光体材料の牙城と思われた無機アモルファス半導体材料は完璧なまでに有機半導体材料に置き換えられて行った。一方で、電子写真技術は複写のためのハードコピー技術からノンインパクトプリンティング技術へと大きく展開され、インクジェット技術と並んで、今日のMan-machine interfaceの要である情報出力技術として、確固たる基盤を築いた。思えば、学会とともに歩んだこの30年の歴史は、Siテクノロジーの発展に伴う情報処理技術の「アナログ」から「デジタル」への転換の時期でもあった。
  

 この間、技術討論会の開催、最新技術の紹介や議論の場としての研究会、シンポジウムの開催、講習会による基礎技術の普及や人材の育成、画像技術の標準化やテストチャートの発行、学会誌の発行、技術解説書の発刊などを通じて、本学会が我が国の画像科学・技術の振興と発展に尽くした役割はきわめて大きい。歴代の会長、理事の方々を中心とした大きな足跡である。
  

 小職が会長として学会運営の舵取りを理事の方々とともに進めていくに当り、学会を取巻く状況について、日ごろ、考えていることを少し述べてみたい。
  

 前述のように、本学会が画像分野においてこれまで果たしてきた役割は極めて大きい。しかし、一方で、本学会が専門領域として、本来、産業技術の新たな発展に、より大きく貢献できたであろうと思われる分野も残念ながら存在する。その一つは、電子写真の光物理プロセスの逆を原理とする有機EL素子に関連する技術領域である。画像表示、ソフトコピーを本学会の技術対象とするかどうかはともかくとして、有機絶縁性光伝導体、つまり、有機半導体を利用するこの素子の最も近くにあった材料は電子写真感光体材料であった。さらに、その延長線上には、電子ペーパ用の有機半導体材料がある。また、今日、プラスチックエレクトロニクスを実現する基盤技術として新たな展開の時期を迎えてようとしているプリンティング技術によるパターニングは画像技術の本質である。学会が、活動範囲を広げ、学術・技術面での社会貢献の幅を広げていくためには、時代を牽引する技術の大きな流れを感じながら、その中で的確にNeedsを捉え、学会の活動に取り入れていくことが必要である。これは、ぜひ、今後の学会の教訓としたい。
  

 日ごろ、議論されることの少ない本学会が直面する課題の一つに、次の時代を牽引する若手研究者・技術者の育成の問題がある。本学会が従来取り扱って来た技術が成熟期を迎え、更なる技術的なイノベーションの可能性が薄れる中、新しい画像技術の展開を推進する研究者、技術者の育成を学会はどのように図ることができるであろうか。これは、本学会がカバーする技術領域がまさに境界領域である故の問題である。
  

 また、アジア諸国の画像技術分野の技術的格差の縮小を踏まえ、関連学会との相互の協調と連携をどのように推進していくのか、本学会がとるべきリーダーシップとは何かも、永年の課題である。
  

 国内においても、前述の情報技術のアナログからデジタルへの質的変換によってもたらされた画像技術の共通基盤は、各学会が得意とする個別技術の違いを超えて、改めて、画像関連学会相互の連携を深める大きな機会を与えている。各学会に関わる研究者・技術者の数は千名程度としても、相互の共通の課題を合同で議論する場ができれば、その波及効果はきわめて大きいものとなる。将来、画像関連学会が連合して、画像関連の学術講演会や欧米を向うに国際会議を独自に開催する日が来ることも夢ではない。
  

 本学会は多くの賛助会員のご支援とご理解のもと、企業、大学等のアクティブ会員の献身的な奉仕と協力によって、これまで、発展的な学会活動を展開してきた。この伝統を大切にし、理事の皆様の協力のもとに、これらの課題に取り組み、学会の運営を通じて、微力ながら、本学会の発展と画像科学・技術の振興に努めて行きたい。