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日本画像学会2023年度シンポジウム(東京)

イメージング技術の最新動向と未来

開催場所:リアル会場:貸会議室内海 1F教室 ハイブリッド開催
開催日:2023年12月15日(金)

2023年12月15日(金)に「イメージング技術の最新動向と未来」と題し, 日本画像学会2023年度シンポジウムをリアル会場:貸会議室内海(水道橋)とリモートとのハイブリッド形式で開催しました.毎年恒例の各技術部会によるこの一年の振り返りに加え,本年度は二部構成として「この10年の技術の推移から将来を読む」と題し,各分野の技術や製品について過去10年の進化を振り返った上で,将来を予測するパネルデイスカッションを行いました.参加者はリアル会場7名,リモート参加20名,委員・講師12名の合計39名でした.
 
第一部(この一年の各分野の振り返り)
1.電子写真技術の最新動向~2023年総括~ 吉田 健(リコー)
まず今年の概要が紹介され,前半は昨年からの半導体・コンテナ不足が解消し円安効果で各社業績は増益傾向であったが,後半は部材不足から供給増が止まり出荷台数は一転して減少した事が報告されました.業界のトピックスとしては,富士フイルムBIによる世界初の接着機能を持つ圧着トナーの発売,リコーと東芝テックの合弁会社設立,コニカミノルタのIS & T Carlson Award受賞などが紹介されました.展示会のトピックスとしてLabel-expoでは最上位機種として湿式で分速最大120mのIndigoのデジタル印刷機から,分速5mのAny-PRESSまで幅広く展示された事,Printing United ExpoではRevoria Press GC12500の基本スペック(推定線速500mm/s)が開示された事,Sharpのプロダクションプリンティングへの新規参入(富士フイルムBIエンジンと推定)が紹介されました.他に複写機遺産の話題,ICJ2023における技術トピック,各社電子写真の新製品や特許出願の動向などが説明されました.質疑では分速120枚機以上も電子写真で可能であるがIJ機より高額になる事,オフィス文書はそこまで高速は必要ないため得意分野の住み分けが進んでいるとの話がありました.
 
2.インクジェット技術の最新動向~2023年~ 瀬戸信二(富士フイルムBI)
まずデジタル印刷の市場動向に関して6.7%増の予測で包装・繊維が成長している事,印刷通販部門はネット環境が整い認知度が上がりデジタル化とマッチしているため拡大が期待されている事,商業印刷・ラベル・軟包装分野はデジタル化が遅れている事から今後の伸びが期待されている事などが紹介され,その後各分野別のIJ製品とトピックスが紹介されました.
商業印刷の分野では連帳機は1200 dpiでオフセット印刷並の画質となるが速度アップはそろそろ限界で水性インクは乾燥がカギとの事,枚葉機は初期投資軽減を狙ったサーマルIJ機がCanonから発表された事が紹介されました.
ラベル印刷ではUVインク主流は変わらないが食品用として水性が伸びている事,IJはグラデーションが苦手な事から展示会ではフレキソとのハイブリッドモデルが多い事などが紹介されました.
軟包装・段ボール印刷分野は共にデジタル化率は低いもののIJ比率が軟包装で1 %,段ボールでは100%と極端な分野で,軟包装で前処理あり水性インクのJet Press FP790の発表は驚きだった事,段ボールでは白インクの性能が上がり注日されているとの事でした.
サイン・グラフィックス分野はデジタル化率IJ比率が共に高い分野で,UVインク・溶剤インクがメインで複数へッド搭載で速度を訴求した製品が多い中,HPから水性 Latexインクで環境性能を訴求するモデルが出てきた事,またミマキから厚盛り印刷や透かし印刷を用いたトリックプリントのようなデジタル化を生かした付加価値提供が出てきたとの事でした.
テキスタイル分野は顔料インクが増加傾向で捺染ではグリーンやオレンジなど多色化が進行中で,FOREARTHは生地を選ばない事と水の利用を限りなくゼロにした事で訴求しており,iugoのようなスクリーンとIJのハイブリッド方式も出てきているとの事です.
ホーム・オフィス分野はホーム用でもオフィス同様大容量タンクモデルが増加中との事です.
その他構造色用インク,円形ステージの3Dプリンター,コンポーネントでは10~20mmという長距離吐出可能なヘッドや30mPa • sの高粘度インクヘッドなどで用途を広げる動きがあるとの事です.
 
3.デジタルファブリケーションの最新動向 酒井真理(山形大学)
まず10年前のJAPERA,TRAFAM等の国プロがいくつも立ち上がった時期からのプリンテッドエレクトロニクスIJを活用した技術の変遷が振り返られ,廃れたもの,現在も検討しているものなどの紹介を通じて,社会実装には臨機応変に現状の方式とのハイブリッドを考えることも必要かもしれないとの提言がなされました.3Dプリンターに関しては,IJ-3Dプリンターは,Binder  JettingとMultiJet Fusion技術が発展するが, 日本企業の活躍が見られないとの事です.デジタルマニュファクチャリングを『デザインすること』,『出力すること』の2つのエ程に分けて考えると『デザインすること』はAIによって大きく変わる事が予想され,従来モノづくりは付加価値が低いため,海外に工場を移すという傾向であったが,これからは国内でも付加価値を高められる可能性があるとの事です.デジタルマニュファクチャリングを考える上では大企業の個社だけでなく,企業関連や個人の力が必要と考えるとの事です.
 
4.電子ペーパー/フレキシブル技術 吉田 学(産総研)
2023年10月の技術検討会からの発表内容から技術紹介が行われました.まずSharpから発表があったePosterは Eink社のカラー電子ペーパー技術を用いた25.3型と13.3型のパネルで,明るいスペースでの静止画領域で省電力を売りに展開していくとの事でした.富士通のRFID技術を応用したUHF ePaper Tagでは電池交換のエ数が課題となっていましたが,UHF RFID技術によるエネルギーハーベスティングで問題を解決でき,バッテリーレスにより適用分野が広がったとの事です.京都工芸繊維大のファブリック型タッチ圧カセンサでは電源ノイズを人間がアンテナとなり,その静電誘導がさらにスペーサーファブリックで静電誘導を起こしている事が紹介され,圧カセンサとしての応用を検討しているとの事です.産総研からは3つの報告があり,フレキシブルひずみセンサー・ファブリックスピーカーではデモ展示も行われ,曲げセンサはドリフトの無い特性を生かしてVRグローブヘの応用を検討中で,スピーカーは指向性が高い特性を生かした応用分野を検討中との事でした.2つ目のユニークな湿度変動電池に関しては最大出力30µWと屋内の太陽電池程度の出力が得られており,センサの値を無線で送る事は可能となっている事が報告されました.3つ目の透明太陽電池に関しては無機ナノ粒子を用いて,熱線から発電できる事が紹介されました.最後にスフェラパワー社より球形太陽電池の紹介があり,積分球を用いた JISの評価で面状の太陽電池の3倍の電流出力が得られている事が紹介されました.
 
5.低電力駆動サーマルプリントヘッドの省エネ化技術 大長章治郎(ローム)
市場はダイレクトサーマルが中心であり,生産量は中国経済の減速もありコロナ期の在庫調整中であるものの,一部増加傾向に転じているとの事です.サーマルプリンターは構成部品が少なくレジ用のミニプリンターや,EC用でバーコード用が伸びているとの事です.ECの拡大でレシートが2倍出力されるようになっており印字速度に対する要求が高いが.印字速度は電圧で決まりLi-ionを 1セル使うか2セル使うかで2つに分かれ,省エネのため 1セル化で印字速度を高める事で利用分野が広がると考えて開発を行ったとの事です.低ON抵抗ドライバーの採用と配線構造の見直しによる20%減.熱伝導の最大化
(保護膜の薄膜化とグレーズの圧幕化)による10%増により,トータルで30%改善し1セル駆動でありながら2セル駆動と同等の印字速度を実現しているとの事でした.サーマルプリンターの8~9割は2セル仕様でこれを1セルにする効果は大きいとの事です.サーマルプリンターでは使用電力のうち20~30%が印字エネルギーとなるそうです.
 
第二部(パネルディスカッション)
まず各分野で過去10年の進化を振り返りました.電子写真分野はトナー技術の向上により画質の改善が進み,オフィス用途からプロダクションプリンティングが技術開発の中心になっている事,また1枚当たりの印刷価値を上げるため多様なメデイアヘの印刷技術開発が盛んになっている事,省環境負荷に向けた取り組みが継続されている事が説明されました.IJ分野ではプロダクション IJ印刷機が普及し1パスで1200 dpiの高画質かつ高速が当たり前になった事,循環ヘッドや,大量吐出ヘッド,長距離吐出ヘッドが各社から登場し飛ばしにくかったイ ンクが飛ばせるようになり,産業用分野で利用範囲が広がった事,ラテックスインクの登場により非吸収性メディアヘの適用が進んだ事,水性白インクの登場で軟包装・捺染などで使われるようになった事が説明されました.サーマル記録分野では,中国ローカルメーカーによる普及型の市場流通数は伸びたが金額は横ばいである事, RFIDラベルやライナレスラベルプリンターの分野の拡大,スマートフォン市場の拡大によるZink方式のカラープリンターの普及などが説明されました.電子ペーパー分野では媒体の供給から日本のプレイヤーが居なくなり,活用分野の開発へと移っていった事,なんとか日本でも新しい表示技術を育てたいと考えている事が説明されました(デジタルファブリケーション分野は第一部の内容と重なるため割愛).
全体のデイスカッションの話題としては,電子写真とIJは各々得意分野がはっきりしてきたため住み分けが進んできた事,プロダクション領域の競合としてオフセット印刷にチャレンジしていく必要があるが追いついてみたけど市場が無くなっていた…にならないように注意が必要な事,オフセット印刷分野は職人に頼っているが高齢化が進んでおり人手不足の問題から印刷会社は次の投資としてデジタル化が進むと予想される事,今後の技術開発としてはニス加工のような後加工がカギとなりそうな事などが挙げられます.第二部でも活発な意見交換がなされ,場が温まってきた時に時間切れとなってしまい大変残念に思います.企画委員としてまたこのような場が提供できればと思いました.

報告者:企画委員:森川 尚(富士フィルムBI),前板敏秀(理想科学工業)