日本画像学会2024年度シンポジウム(東京)
『知ろう、語ろう!イメージング技術の最新動向と新たな価値』~ラベルを剥がし、垣根を越えて切り拓く未来~
2024年12月6日(金)に「知ろう,語ろう! イメージング技術の最新動向と新たな価値」をテーマに,日本画像学会2024年度シンポジウムをリアル会場:貸会議室 内海(水道橋) とリモートとのハイブリッド形式で開催しました.毎年恒例の各技術部会によるこの一年の振り返りに加え,本年度は二部構成として「ラベルを剥がして未来を創る:アンラーニングで拡がる新しい世界」と題し,画像技術の新たな可能性を探るためのワークショップを実施しました参加者はリアル会場22名(委員・講師含む), リモート参加16名,合計38名でした.
【第一部】
電子写真技術部会からは「電子写真技術の最新動向~2024年総括~」と題し,日機装株式会社の小森智裕様よりご発表を頂きました.まず,電子写真の市場動向として2024年度はカラー複合機の販売が順調に推移し,各社の業績が概ね好調であったことが報告されました.次に,展示会の様子や複写機遺産に認定された機種,特許動向についての解説がありました.技術および製品の動向としては,次世代露光デバイス(D2 Exposure)を活用した解像度の向上の取り組みや,環境に配慮した各社の新製品が紹介されました.また今後の展望としてプロダクション,ラベル,パッケージの分野において,電子写真の更なる展開が期待されることが述べられました.
インクジェット技術部会からは「インクジェット技術の最新動向~drupa2024~」と題し, コニカミノルタ株式会社の江口秀幸様よりご発表を頂きました.まず,産業用インクジェットプリンタ市場として,テキスタイル,商業印刷, ラベル,段ボール,セラミックといった分野が,デジタル化の進展に伴い成長が期待される市場であることが紹介されました.次に, drupa 2024における各社の動向についての報告がありました.パッケージ印刷をはじめとする産業印刷分野向けの新製品が数多く展示されていたことに加え,新たなインクや新たなインク循環ヘッドの発表があったことが報告されました.また,各社の事業成長におけるキーワードとして「持続可能性」「省力化」「DX」などが挙げられました.
印刷技術の応用については「デジタルファブリケーションの最新動向」と題し,山形大学の酒井真理先生よりご発表を頂きました.まず,技術の潮流についてハイプ・サイクルを用いた解説が行われ, その後,デジタルファブリケーションの応用領域について紹介されました.具体例として,インクジェット技術の応用が取り上げられ,QD-EL(量子ドットエレクトロルミネセンス)の発光素子やMicro LEDの実装に関連するデイスプレイ分野での活用が説明されました.さらに,インクジェット技術における新たな進展として, 高粘度材料への対応や, AIを活用した制御技術によるインクの着弾精度向上の取り組みが紹介され,多岐にわたる分野での応用が期待されることが示されました.
電子ペーパー/フレキシブル技術部会からは「電子ペーパー/フレキシブル技術の最新動向」と題し,富士フィルムビジネスイノベーション株式会社の森川尚様よりご発表を頂きました.まず,電子ペーパー市場は成長市場であり,今後も需要が拡大していくことが示されました.次に,外部環境として日本政府の政策やICT技術, 給電技術通信規格などの業界資料やロードマップについて紹介がありました.これらを基に,技術の普及と社会の変化につて考察がなされ,2030年のIoT機器の姿の予測について解説がありました.その中でIoT機器の目指す方向として, 「センサ」「AD変換」「通信」「電源」の4つの機能に加え,電子ペーパーなどの「マンセンサーコミュニケーションユニット」を追加することが提案されました.さらに周囲の環境から微小なエネルギーを収穫し,電力に変換する「エネルギーハーベストユニット」との組み合わせによる活用イメージとして,電子棚札や電池レススイッチの紹介がありました.
サーマル記録技術部会からは「サーマル記録技術のプリントヘッド最新動向~2024年度~」としてローム株式会社の大長章治郎様よりご発表を頂きました.まず,サーマルプリンタ市場について,物流贔の増加や電子決済の普及により拡大傾向にあることが報告されました.次に,技術動向として,高速印字技術や紙粉の付着を制御する技術,省エネルギー化の取り組みなどが進展していること説明されました.さらに,金属や木目調の加飾印刷技術に加え,熱転写インク層を活用して凹凸を形成し,手触りや質感を表現する新しい印刷技術が紹介されました.最後に,サーマル記録技術の将来展望として,省人化需要の高まりに伴い,用途の更なる拡大が期待されることが述べられました.
【第二部】
「ラベルを剥がして未来を創る:アンラーニングで拡がる新しい世界」と題し,産業技術大学院大学の上林昭先生のファシリテーションのもと,ワークショップを実施しました.「アンラーニング」とは,既に学んだ知識や価値観を意識的に手放し,新たな視点で学び直すことを意味します.参加者一人ひとりが持つ「ラベル」を剥がし,固定観念を超えて新しい価値観や知識を取り入れることで,新たな自分を発見する場が提供されました.
ワークショップでは, 参加者がグループに分かれてディスカッションを行い,議論を通じて参加者同士が互いに気づかなかった側面を指摘し合いました.また,それぞれの強みを補完し合うことで,個人として新たな強みを発見するという成果を得ました.
さらに, この手法を展開することで,学会組織や技術分野に新しい視点を取り入れる可能性が示されました.本ワークショップは,参加者個人の成長に留まらず,組織全体がより大きな発展を遂げることを予感させる,有意義な時間となりました.